一緒に行こう
「。来い。」
そう初めて言ってもらったのが入隊してから初めてコロニー、ヘリオポリスに潜入した時。
まさかそんなことを言う人なんて、思いもしませんでした。
その時から私は・・・
きっと彼に惹かれてたんだと思う。
「ああ、ここにいたんですね。」
その柔らかい印象の声は、に向けた声だった。
戦場を行き来して、MSと戦って。人間を殺して。
そう生きている・セトラにとって、この少年。
二コル・アマルフィは心の休まる唯一の心の拠り所だった。
そう考えている戦士もだけではないだろう。
温厚なこの少年は、誰にでも好かれるような、そんな雰囲気を持っている。
からしたら、可愛い年下の少年。弟と呼んでもおかしくないくらい仲が良かった。
「?」
ニコルの顔を見て少し考え事をしていたは、ニコルの再度の呼びかけで覚醒する。
考え事と言っても、次の出撃はいつだろう、とか。
そんな平凡な考え事。
「ん?」
「ああ、気がつきましたか?
僕、を探してたんですよ。一緒にブリーフィングルームに行こうかと思って。」
なんだそんなことか、と思うような文字の羅列だったが、とニコルはこれが普通。
だから何度か恋人同士なのかと思われたりもしたが、二人は『大切な友達』同士。
『だって可愛いもん』
というのが本音だが。
「え。なんか呼び出されたりしたっけ?」
「もう、聞いてなかったんですか?
クルーゼ隊長がパイロット呼んでましたよ?」
「あ、そうだったの!?じゃあ早く行かないと駄目じゃん。」
そんな会話を交わしながらとニコルは壁を蹴ってブリーフィングルームに向かう。
その途中、プラチナブロンドが見えた。
その瞬間、の心臓が大きな音を立てて鳴り出した。
「おい、・セトラ。」
「ああ、イザーク。あ、僕先に行ってますね。」
気持ちを察してくれたのだろうか、二コルは微笑んでそう言ってくれた。
二コルにはのことで分からないことなどないような感じがする。
それもそのはずで、二コルにはの気持ちやら精神的なことまで相談に乗ってもらっている。
それに気の利く子だから。
今はそれよりも目の前にいる青年だ。
名前を呼ばれてから、は彼、イザークの端整な顔立ちに見とれていたのか、声が出なかった。
いや、にとって彼に名前を呼んでもらえるなんて思ってもみないこと。
それが嬉しいのか、それとも彼への気持ちの方が勝って緊張でもしているのだろうか。
「おい、!」
また音の大きさが上がった。
「あ・・・はい、何?」
つい勢いで無愛想なことを言ってしまう。
これも彼のせいで。
「足つきが近いそうだ、行くぞ。」
それはさっきまでニコルも言っていた、今最優先するべき任務。
でもそれくらい自分も知っているはずなのに、
無性に嬉しい。
「お前は人の話もアナウンスも聞いていないからな。」
普通に言ったらただの批評言葉。
でも今の彼の言葉は優しい。
そう感じられるのはだけなのかもしれない。
でもイザークに惹かれているからすると、それは限りなく暖かい、残酷な言葉なのかもしれない。
「・・・イザーク酷いなぁ・・」
彼ともっと長く話していたい。
彼ともっと一緒にいたい。
そんな考えも虚しく、着いたのがブリーフィングルーム。
クルーゼ隊長に呼ばれて、詳しく作戦を聞く。
でも近くにいるのなら目につくのが人の性・・・なのだろうか。
いくら作戦会議中でも、きになる人を見るのは禁止というわけではないのだから。
「。ニコルが成功した後、
君にも出てもらう。イザークとディアッカと共に発進してくれ。」
「了解しました。」
ということはニコルは当分ガモフに戻らないということだろうか。
すると必然的にはイザークと一緒にいる時間が延びるのではないだろうか。
「よし、作戦は聞いただろうな、。」
「聞きましたよ。」
何故か後ろでディアッカが笑いをこらえていた。
「なら、少し・・時間あるか?」
この人はいきなりなんてことを言ってくれるのだろう。
軍人だからもう二度と人を好いたりなどしないと思っていたのに、こんなことになるなんて。
こんな気持ちになったのも、すごく懐かしい気がする。
きっとなんとも無い話だろうに、にはいろんなパターンが浮かぶ。
こんなこと、きっと駄目だ。
「・・・うん・・。」
なら、どうする・・・?
イザークと私なんか、つりあわない。
イザークは赤の元エースだし、私は赤の平。
それでも何か進展があればラッキーなのかな。私の場合。
イザークに連れられていったのが休憩室。
大きなガラスからはザフトのMSがたくさん見える。
その中には二コルのブリッツもあった。
「なぁ、」
「何〜?」
「お前・・・・・・・いや、またでいい。」
「何なの〜?気になるから言っちゃえばいいのに!」
これは本音。
はっきり言って欲しかった。
少しくらい期待していたし、話の流れからは光が見えたような気もする。
それでも彼はこっちを向いて。
「お前危なっかしいからな。やる。」
動作のまま手を差し出すと、の手に乗ったのは『お守り』。
念を込めてあるのかなんとかで、名前のとおり災厄から身を守ると彼から聞いたこともあった。
「もらっていいの・・?」
「俺には必要ないからな。」
その無愛想な言い方が、なんだかには可愛く見えた。
そう微笑んで見せた後、イザークの顔も綻ぶ。
すると。
『パイロットは搭乗機にて待機してください』
もう時間切れみたいだった。
そんなに話したこともなくて、接点なんてほとんど無かったけど・・
ここまで来れたなら、もう心配無いのかな。
「イザーク、」
「何だ。」
「ありがとう」
「いや・・あの、」
「何?」
「・・・戻ってからでいい・・・・・」
「何か言った〜?」
「いや、一緒に行こう!」
「そうだね、これから一緒に、ね。」
すでに第2戦闘配備が下されているMS格納庫では、
二人のほほえましい会話を見て微笑をたたえるディアッカの姿があった。
あとがき
これ、4年くらい前のアス×イザ誕生祭に参加させていただいた作品です。
00が始まって妙に発熱したガンダム熱。
続くかなぁvv
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