待っててね
時はすでに10月
いい加減寒くなってきたなぁと思う頃
もう、たちがこの平泉へ落ち延びてからずいぶんと経った
高館での生活にも慣れてきた
そして今には大切なパートナーがいた
「神子様。」
銀という青年
出会いは突然やってきて、を助けてくれた
でも仲良くなるにつれて銀に秘めた過去を
銀に秘めた想いを
いろいろ考えるようになった
最初はただ、恋しくて恋しくて仕方が無かったけど
一度彼を助けようと思ったら
彼に仕組まれた彼の運命に妨げられてしまった
この時空ではそんなことにはしたくない
その決意だけを胸に
は銀を一人あの時空に置き去りにして助けに戻った
「神子様?」
「あ、なに?銀。」
「いえ、神子様があまりに可愛らしいので、見とれておりました。」
そんな優しさのこもった台詞でも
身を案じるような台詞でも
にはとても心地よかった
嬉しかった
今よりもずっと愛しくなるばかりで
「そっ、そう!?
・・・ありがとう、銀。」
「いえ、神子様に喜んでいただけるのなら幸いにございます。」
願わくば
この平穏に影を伸ばす彼の運命を
変えたい
「それにしても、最近寒いよね。」
「では、高館へお送りいたしましょう。
お手をどうぞ。」
そういって銀は手を差し伸べる
もその手をとる
二人の気持ちが離れてしまわないように
ふと、強い風が吹いた時
「神子様・・・」
銀はをそっと優しく抱きしめる
まるで黒い部分が少しも無いような暖かい声で
「えっ、し、銀・・・ごめんね、ありがとう。」
「いえ、秋は寒いのですね、私が神子様をお守りいたします。
ですから、一緒に居て下さいますか・・?
私自身のわがままなのですが・・・聞いて下さい。」
「ずっと・・・あなたを愛しておりました。」
「銀・・・重衝さん・・・。」
その言葉
あなたの心を失ってしまった時空でも
その言葉と
その優しい声なら覚えてる
銀はきっとまた辛い思いをしてしまうだろうな
その時私は銀を守りきれるんだろうか
いや、きっと
守るんだ、銀を
誰がなにを言っても守ろう
もう、あなたを置いて時空を跳躍したりしたくないから
「ずっと、一緒にいられるように、私、頑張るよ・・。
銀も自分が幸せになること、あきらめないで。
私はいつでも銀の味方だから、困ったときは、私を呼んで。
もう銀と離れたくないから」
「もちろんです。神子様・・。」
「生きよう、一緒に。
この時空をずっと。どんなことがあっても。」
10月のことだった
これから私達は、どれだけの試練を突破していかなければならないのだろう
それでも強いよ、私と・・・
あなたとの絆は、もう不変だよね
だから前の運命を
私の手で変えてみせる
待っててね、銀
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