Love Game in ValentineDay -Kazuki Side-






今日は、バレンタインデーなんだ。

女の子達が、すきな男の子にチョコをあげる日。

でも最近は女の子同士でチョコの交換してるばっかりだから、ちょっと残念に思ってるんだ。

だって、人に好かれるのって嬉しいじゃない!


実は、ちょっと気になってる子がいるんだ。

ちゃん。

おれの大好きな友達。

でも、最近は・・・を見ると胸が苦しくなるんだ。

あんまり深く考えたこと、まだないけど。

きっと、にチョコなんかもらったら・・・嬉しくて抱きしめちゃうくらい。


だいすきなんだ。




「起立、礼」

「お願いします」



今日はバレンタイン!

・・・・なのに、おれの周りはあまりいつもと変化がなくて。

一部の派手な女子だけがチョコを交換してるくらい。

なんだか授業もつまらなくなってきた・・眠い・・・・。


一番窓際にあるおれの席は、午後になるとあったかい光がさしてポカポカする。

それが余計に眠くなるんだけど。

眠いついでに眩しい外を見ると、3年のどこかのクラスの女子が体育の授業をやっていた。


あ・・・・あれって・・

!?


なんでだろう、急に眠気がなくなって。

気が付けばを見てたんだ。

問題に詰まったときなんかは特に。



そんないつもどおりの生活を送っていたら、すぐに授業なんか終わっちゃった。

帰りのSHRが終わって友達と教室の掃除をしてたら、同じオケ部の後輩の城野さんが3-Bの教室の前に立ってた。

なんでかな?って思ったし、1人で立ってるの見てたら・・

おれ、先輩なんだから、なにかしてあげなきゃって思ったんだ。

だから急いでほうきを片付けて、



「こんにちわ!ここ、3年の教室なんだけど何か用でもあったかな?
 あ、もしかしたら柚木?
 良ければ呼んでくるよ!」

「い、いえ・・火原先輩にお話があって・・」

「おれ?」

「・・はい」

「何かな?」



そのときはちょっと・・・期待してたんだ。

理由は城野さんの手には小さな紙袋があって、その中にはきれいにラッピングしてあるものが見えたから。

今日はなにも無い普通の日だって思ってたから、

もしチョコなんかもらえたらいいなーって。



「あの・・友達が・・」



そう言って城野さんは紙袋をそのままおれにくれた。

え・・・これって全部おれのだった・・の?

そう思うと嬉しいような、でも人に渡させるような子に好かれてもなぁ・・なんて。

贅沢なことを考えてしまうわけだけど。

結局、期待していたことが現実になるっていう小さな喜びがあるわけで。



「全部?おれ、全部もらっちゃっていいの?!」

「はい」

「うれしいよ! ありがとね!」



城野さんは、ちょっとうつむき加減の小さな声で言った。

その頃はもう掃除が終わったみたいで、おれの前に城野さんが立っているまま、辺りはどんどん静かになっていった。

『うれしいよ』なんて。

なんてこと言ってるんだろう、おれ・・

どうせ嬉しいわけないのに。

から貰いさえすればそれで満足、なんて思いながら学校きたのに。

感じるのは優越感。

それと、誰かにもらえたって言う安堵感。

おれって、酷いのかな?

城野さんは、なんでおれにチョコなんかくれたのかな・・?

部活の先輩だから?


そう葛藤している間、城野さんはずっと黙ってた。

でもしばらくすると重い雰囲気の中、静かに口を開いてくれたんだ。



「あと・・これ」



城野さんが差し出したのは、さっきよりもう一回り小さな、可愛らしい箱。

その箱には『火原先輩へ』と書かれたカードが差し込まれていた。



「えっ? おれなんかがもらっちゃっていいの?」

「はい・・・ココじゃ何だし、屋上行きませんか?」

「いい・・けど」



唐突な屋上へのお誘い。

別に断るほど時間に追われてるわけでもなかったから、屋上に行くことにした。

そのとき、聞きなれた声がかすかにしたんだ。


「んん〜っ!?」


の、変な声。

どうせ柚木がおれと城野さんの雰囲気を気遣ってくれたんだろうな。

そう、思えるのに。

すごく安心した。

ちゃんと、が来てくれたこと。

おれのために来てくれた・・・だなんて思っちゃうのは・・おれの思い込みかな?

急に屋上に行くことへの興味が失せちゃって。

『心ここにあらず』だよ。



屋上に着くと、城野さんはおれに抱きついてきた。



「えっ・・!? ちょ、ど、どうしたの!?」

「先輩は・・・好きな人って・・いますか・・?」



唐突なその質問に、の顔が真っ先に浮かんだ。



「なんで・・そんなこと、」

先輩しか、駄目なんですか・・?」

「えっ!?」



なんで、城野さんがを知ってるの?



「私は、先輩には勝てませんか?」

「・・・・・」



そんな泣き顔見せられても、

そう簡単に変わるものじゃないんだ。人が人を好きになるって言う感情は。



「ごめん」



そう言うしかない。

だって、そうなんだから。



「・・・・・はい・・ごめんなさい・・」

「あっ、謝らなくてもいいよ!! おれの問題なんだし・・」

「いえ・・すみませんでした・・」



城野さんは、もう顔を真っ赤にして泣いていた。

こうゆうとき、柚木ならどうやって慰めるの?

そう聞きたかったけど・・聞けるような状況じゃないから。精一杯明るく振舞ったんだ。



「元気出して!・・ね!」

「はい・・」

「またトランペット聞かせてよ! 頑張ってね!」



それだけ言って、おれは階段を全力で駆け下りた。

城野さんには悪いと思ってるけど、が教室で待っててくれてると思うと・・

いてもたっても居られないから。


をびっくりさせようと思って、廊下はわざと静かに歩いた。

の驚く顔が目に浮かぶよ!

おれが名前を呼ぶと、きっと目を丸くして驚くんだ。

でもすぐに微笑み返してくれる。

きっと、そうなんだって思った。



がいることを確認しようと思ってそーっと教室を覗き込むと。



「んっ・・・」



あれ?

なんか幻覚でも見たのかな!?



柚木がと・・・

















キス・・・・・・・してるなんて













急なその出来事にほんの数分動けなかった。

でも、きっと見間違えだろうなって思った。

そう思い込ませたんだ。自分に。


教室に入る。

それも、わざといつもより3割増しの明るさを盾にして。




、見てみて! おれこんなにたくさん貰ったんだよ!」


「そ・・っか、よかったね! いくつ貰ったの?」



の笑顔に違和感があった。

そんなこと、今考えたくなくて・・・無理におれも笑った。



「5個も貰ったんだ!
 凄いよね!? おれ、こんなにたくさん貰ったの幼稚園以来なんだ」


「へぇ、さすが火原だね」


「柚木が言うなよな。 毎年車2台使って持って帰るくせに」


「ごめんごめん。 でも今年は1つも貰っていないんだ」


「え? なんで?」











『本命だけ貰おうと思ったものだから』




やっぱり、柚木、そうなんだ・・




「へぇ〜、意外だなぁ・・柚木って本命いたんだ」


「まぁね」


「誰?」



そう聞くのは、反射的だった。






「・・・・?」


「そうだよ」


「そ・・・・・そっか! そうだったんだ、おれ、気が利かなくて、ご、ごめんねっ!」



それだけ言うと、おれは慌ててチョコをリュックへ戻す。



「じゃ、じゃあまた、明日ね!! も、ま、また明日!」


「じゃあね、火原」


「火原くん・・」


「そ、その、。 話とか、相談とか、乗るからさ、ま、また明日!」


















・・・・はじめてだ・・こんな・・気持ち・・。
















あとがき

火原っちサイドです。
初めて視点を変えて同じ夢を書きました・・・
めちゃめちゃ凄い勢いで書き上げられました。やっぱ火原っちは根っからのいい子ですから。
最近柚木にキスされまくってる当サイトのヒロインですが・・・。
ここまで読んでいただいて本当にありがとうございました!

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