AMICUS









プラントからさ程遠くない宙域にて待機中の戦艦ヴェサリウス。

その戦艦のトップであるラウ・ル・クルーゼは、部下の1人であるニコル・アマルフィを自室へ呼んだ。



「何かあったんですか? 隊長」

「いや、少し面白いことを思いついたのだよ」

「面白いこと・・?」



ニコルはあからさまに首を傾げて見せた。

ラウ自身はその仮面によって表情を隠しているが、声から伝わるものは楽しさそのものだった。



「ああ。もうすぐクリスマスだからな、2日ほど休暇をと思ってね」

「休暇・・ですか」

「・・・そういえば、がプラントに最近できたショッピングモールに行きたいとか言っていたな・・」

「はぁ」

「報告はよろしく頼むよ」



そう。

ラウの溺愛する少女こそ、ヴェサリウスのMS整備士であるである。

何故かって?

そら可愛い上に鈍感だからでしょう。

ラウはのことをわが子かそれ以上に溺愛していたのだった。

毎日の笑った顔を見るまでは寝られないと言うほどのいわばストーカーだ。

そんな彼だが軍の中では指揮官である。

そのため彼の部下である赤服をまとった面々は、そんなオーダーに従わざるを得なかった。

まぁ、それほど迷惑なオーダーでもなく、逆に赤服メンバーにとってはラッキーだったりもした。

















「クリスマスだぁ!?」



ヴェサリウスの艦内にイザークの声が響く。

その声の先にいる少女といえば、うるさいとばかりにあきれたため息をついていた。



「なんでまたそんなにびっくりするのよ」

「そうそう、だいたいイザークだってクリスマスくらい知ってるだろ?」

「なんだと貴様!! 俺がクリスマスすら知らないと思ってるんじゃないだろうな!」



イザークと同室のディアッカは、哀れにも襟元をつかまれ、怒鳴られた。



「ちょ、ちょっと待てって!」

「なんだ!! 言いたいことがあるなら言ってみろ!!」

「あーもー、なんでそういちいちキレなきゃなんないの!?」



1人の少女が2人を止めに入った。

クセのある長い黒髪を持つは、いわゆるこの2人の『お隣さん』だった。



「なんでって・・!!」

「勝手な解釈はやめてっていつも言ってるじゃない」

「そーそー。 たまにはの話も聞けよ」

「俺はちゃんと聞いている!」

「・・・・・はぁ、これは何言っても無駄かな?」

「だいたい! 元はと言えばアスランと貴様が原因だろうが!」

「は? アスラン?」

「・・ああ。 お前が来る少し前にヤツもここへ来たんだ」



そして以下、イザークの回想へ突入。


『シュミレーションの時間だ』とかなんとか言いながらヤツは来やがった。

シミュレーションが終わったらこの後時間はあるかと聞かれた。

そんときあいつ、なんて言ったと思う!?


『もうすぐクリスマスだろ、皆でパーティーでもやらないか?

 イザークも参加してくれると嬉しいんだけどな』


なんだあの爽やかなツラは!!!!

アースーラーーンっ!!!


・・・やっと帰ったかと思ったら立て続けにお前まで来たんだ!



「ちょっと待って!」

「なんだ」

「ディアッカはそのとき何してたのよ?」

「俺は隊長に呼ばれてた」

「何の用件で?」

「・・・クリスマスの話だけど?」

「・・・・・・・」



という前フリの後、俗に言う赤服4人組+お隣さんで有能な整備士のは、

クルーゼ隊長の計らいによってクリスマスパーティーを決行することになった。





そしてクリスマスイブ。

よりにもよってイザークとディアッカの部屋へ集まった一同。


第一声はアスランのものだった。




「これ・・・何すればいいんだ?」



全員黙りこくった。

大方同じ事でも考えていたのだろう。

ここでニコルのナイスな発言。



とデートでもしたらどうですか?」

「はぁ? なんでまたこいつとなわけ?」

「だって、デートは普通女性とするものでしょう?」



そこいにたイザークとアスランは放心状態に見える。

しかしイザークに限って言えば、『心の中でガッツポーズ』だった。

単刀直入に言えば、イザークはのことが好きだ。

そんなことは周りに言わせてみれば当たり前のことなのだが、当の本人だけ妙に鈍く、

毎回煮え湯を飲まされる思いで必死のアプローチを続けていたのだった。

おそらく、二コルの発言もイザークを考慮してのことだ・・・・と思いたい。

そのとき、当の本人は。



「あ、そだ! この前プラントにできたショッピングモール行ってみたい!!」

「ほら、ノリノリですよ。 アスラン? 聞いてますか?」

「あ!? ああ、大丈夫、聞いてるさ」

「・・・・・・寝てませんでした?」

「・・あはは、はは」


「でさ、どーするわけ? 割り振り。 俺が連れてってやろうか?」

「あたしは全員で行ってもいいよー」



ちょっと控え目にアピールしたものの、この程度では無力のようだ。

それを見てアスランは妙に勝ち誇った笑みをし、イザークはそれを睨んだ。



「そういえば俺、母さんに花を買いたいんだけど、どうせなら一緒に行った方がいいよな?」

「そんなくだらない人選があるか!! ここは正々堂々、に決めてもらうべきだろう!!」



ニコルはシナリオでもあるかのように淡々と話を進めた。



「じゃあ、そうしましょうか」

「誰か1人?」

「ええ、誰か1人選んでプラントに連れてっちゃって下さい。
 あ、僕は用事があるので選択肢からは外して結構です」



明らかにキャラが間違っているニコルは爽やかな笑顔と共にを促した。

一方イザークは今更ながら必死に目線をへ送る。

意味はもちろん『俺って結構買い物上手だぜ』である。



うーん、とは呟く。





「えーっとねぇ、じゃあ・・・・

( 誰にしますか? )




















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