AMICUS-イザーク-










「じゃあねぇ・・・イザークかな」



一瞬辺りが静まり返ったかと思うと、そこにいた全員の視線がイザークに集中した。

本人は呆けたように目を見開いている。



「・・? イザーク?」

「な、なんだ、俺でいいのか?」

「どしたのイザーク? やけに謙虚だね」

「俺はいつも謙虚だ!」

「あははっ」

「何がおかしい!」

「よかった、いつものイザークだ」



その言葉に、イザークはなにやら嬉しいような残念なような不思議な感覚を覚えた。



「・・・そうか」

「あ、やっぱり変」

「そ、そんなことはない!! そうだ、それで明日はどうすればいいんだ」

「お買い物、行こう?」

「それが済んだらどうするつもりだ?」

「うーん・・・じゃあイザークに任せるよ」

「分かった」

「ありがとう! じゃあ楽しみにしてるね!」

「・・・・ああ」



かなりいい感じになってきるじゃねーか、とディアッカがイザークに耳打ちをした。

イザークは白い肌を少し赤らめて反発する。

は全く気づかず、自室へと戻っていった。





そして、来たる12月25日。

の家の前には、1台のエレカが停まっていた。

そこから出てきたアイスブルーの瞳を持つ青年は、その家のインターホンを押す。

しばらくすると、家からは少女が出てくる。

見慣れないスカートとトレンチコートという私服をまとい、珍しく爪にもネイルアートが施してある。



「おまたせ!」

・・・」

「ん?」

「いいな、似合ってる」

「そう・・・かな、ありがとう。 でも・・イザークらしくないね」

「そうか?」

「うん、なんか素直すぎて・・ちょっとびっくりしたかな」

「なんだと?」

「ううん! なんでもないよ!」

「フン・・まぁいいさ。 行くぞ、ついて来い」

「ちょっと待ってよ!」



そう言うとはイザークの後を追う。

エレカに乗ると、その車は最近できたという大規模なショッピングモールへ向かった。




「・・・何が欲しいんだ?」

「じゃあ・・・時間」

「は?」

「イザークの今日1日の時間・・・欲しいな・・なぁーんて」



は少し照れるように語尾を濁す。

イザークはいつものようにしっかりとした目線でを見つめ、言った。



「その前に」

「え?」

「お前の時間、俺にくれないか」



彼の目は真剣そのもので。

とても冗談を言ってるようには思えなかったから。



「・・・はい」



は彼に応えるだけだった。






イザークはの手を取ると、そのまま駐車場へ向かった。

2人は再びエレカに乗る。


しばらくするとイザークは1軒の豪勢な家の前でエレカを停めた。

― イザークの家だった。



「イザークの・・家?」

「ああ」

「すごいね、すごく大きいしお洒落」



イザークはエレカから降り、の手を引いて家へエスコートする。

中に入ると、イザークらしいシンプルなインテリアが並ぶ。

しばらく行くと、リビングらしくソファーとテレビの置かれた部屋に着いた。

イザークはソファーに座るように促す。



「紅茶でいいか?」

「あ、私手伝うから」

「客人はそこで大人しくしていろ」

「えー」

「なんだ」

「私がお邪魔してるんだから、ここは私が手伝うべきでしょ!」



するとイザークは半ばあきらめたようなため息をつくと、



「勝手にしろ」



そういい残し、さっきまでの座っていたソファーへと身を沈めた。


しばらくすると、キッチンからは紅茶独特の馨しい香りが漂う。

が最近気に入っている茶葉が丁度この家にもあったようだ。

いつもよりずいぶんと上機嫌でイザークの前に現れる



「おまたせー!」

「悪いな」

「いいって、気にしないで。 私が好きでやってるんだから」

「・・・・・



急に改まった表情をするのはイザークだった。



「なに?」

「真面目な話・・してもいいか」



ほんの数刻の後、も表情を改める。



「分かりました」



イザークは、その重い唇からゆっくりと言葉を紡いだ。





「はい」

「好きだ」

「・・・・・はい?」

「だから、俺はのことが好きだと言っている!」



今度こそまっすぐに伝わったのか、の顔は火でもついたかのように真っ赤になっていた。

俯いてはイザークをふいに見る。

そんなことを繰り返すに対し、イザークはまっすぐにを見つめていた。



「こんなの・・・失礼だよね」

「?」

「ごめん、ごめんね、私・・きっと今までずっと・・」

「なんだ、気づいていたのか?」

「いつも貴方が私に話してくれる度に少しずつ、ちょっとずつ、貴方を想う気持ちが増えてきて」

「・・・ああ」

「でも、きっと、そんなことないって・・勝手に思ってて」

「・・・そうか」

「ごめん・・すごく失礼だったよね、たくさん傷つけたよね」

「・・・・」

「イザーク・・」



愛しむように、すがるように。

の瞳はすでに涙をいっぱい溜めていた。



「気にするな、俺に度胸が無かったんだろう。 きっと」



の頬に手を添えると、零れだした涙を拭ってやる。

その行為に対して少し微笑むに、イザークは口付けた。



「ん・・・っ・・」



は抵抗をしないどころかイザークに身を任せるようにした。

イザークのプラチナブロンドの髪が彼女の頬に当たった。



・・・」

「イザーク、今まで・・ごめんね、大好きだから」



そう言って天使のように微笑むは、イザークにとっての本物の天使のようだった。

思わずを抱きしめ、耳元で囁く。



「好きだ・・好きだったんだ、ずっと・・」



はイザークの顔に自分の顔を近づた。



「幸せ。 幸せ。 幸せ」



白い肌をピンク色に染めるイザークを見て、は微笑み、

そしてイザークの頬にキスを落とした。



・・」

「メリークリスマス、イザーク」







































しばらく経ってプラントには、『イザーク・ジュールとが婚約した』という噂が飛び交った。

それが実現されるのは、また大きな戦争を越えた後の話。
























あとがき


イザークは素敵ですね。
やっぱりこういう人にめぐり合うと人間成長するでしょうねぇ。
いろんな夢サイト様を回って読んでいると、急に甘いシチュエーションが書きたくなります。
さて、残すはアスランのみ!
甘くしたいですけどワタクシにはそんな技術は・・
最近やっとキスするようになりました。うちのヒロインは。
これからも末永くよろしくお願いいたします。

ではでは、こんな駄文をここまで読んでくださってありがとう御座いました!!!


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