AMICUS-ディアッカ-










「じゃあねぇ・・・ディアッカ!」

「よっしゃー!」



その名前が出た時、他の2人から舌打ちが聞こえた。



!! ホントにディアッカでいいのか!?」

「おいアスラン、ちょっとソレは俺に失礼だぞ!」

「何されるかわからないんだぞ!?」

「うーん・・・・ま、大丈夫っしょ」

「そうそう! 俺はそんな不純な人間じゃないって」

「はぁ・・・やっぱは俺なんて・・」

「まぁまぁ、ここはとりあえず穏便に」



なんとかその場は収まったが、後でニコルがアスランとイザークを呼んで何かを話していることは誰も知らない。














来たる12月25日。

約束通り、とディアッカはプラントの中でも最大級の規模を持つショッピングモールへ来ていた。



「なんか・・・いいな、ソレ」



めったに見ることが出来ないの私服を拝むように見るディアッカ。



「もう! そんなに見ないでよ」

「はは、ゴメンゴメン」

「行くよ、もう」

「はいはい」



いやぁ、もしかしたら俺達。カップルに見えてるかも?

そりゃそうだよな、大体クリスマスに同僚と買出しなんてありえねーだろ。

これは今日攻めろっていう神様の思し召し(おぼしめし)!?

今日はツイてるぜ!!

頑張れよ、俺!



カップルと家族であふれかえるショッピングモール。

そのほとんどが手を繋いだり肩を組んだりとイチャイチャしている。

それをじっと見ながら、ディアッカはいいことを思いついた。



「・・ちょっ!」

「どーしたの? 俺に触られるのは嫌?」



ディアッカはの手を握ったのだった。

しかも全ての指を、解けないようにしっかりと絡ませて。

さすがのも少し戸惑いを見せている。



「べっ、別に・・・」

「サンキューな、



そう言うとディアッカはを見つめた。

視線を感じ続けるのも苦手なは、その行為をやめるように言うつもりで自分に手を絡ませる輩を見た。



「あっ・・・」



は動けなくなった。

ディアッカが自分を見る顔が、とても話しかけられるような表情でなかったから。

必然的に見詰め合う形となった。

その構図は愛し合っている2人そのものだ。


ゴッ!


すると、近くのゴミ箱が音をたてて急に倒れた。


「ちょっとイザーク!」

「悪いのはディアッカだ!」

「しーっ! 静かに!!」


犯人であるニコル、アスラン、イザークは慌ててその場から立ち去った。

ゴミ箱が倒れる音で我に返ったは、慌ててディアッカの手を引いて前に進みだした。



「びっくりした・・・・、ほら、行こう?」

「・・・・ちぇ、いい感じだったのに」

「何か言った?」

「べーつに。 そういえばお前、どこ行きたいんだ?」

「うーん・・・適当にふらふらしたかっただけだけど・・」

「へぇ?」

「せっかくだからヴェサリウスの皆にクリスマスプレゼントでも買っていってあげようかな」



ダンッ!!


今度は壁を叩く音がした。

音のする方を見てみるが、何も起こってはいなかった。


一方3人はと言うと。


・・・・なんていいヤツなんだ!!」

「ホント、ディアッカなんかにエスコートさせるにはもったいないな」

「さすが俺の惚れた女だ!」

「・・・でもお願いですから目立たないでくださいね」


そんなことを言っても、緑、プラチナブロンド、濃紺の髪色が揃っていればさすがに目立たないわけにもいかない。

更に3人とも顔立ちの整った男だ。

そんな3人が物陰に隠れては何か行動を起こし、また隠れるようなことをしていればなおのこと。


だが鈍感なに助けられ、鈍感に振り回されるディアッカにも助けられ。

どうにか任務は遂行中である。




その後もとディアッカはあからさまなデートを続けた。

気になる店に入っては出てを繰り返した。


ある店では足を止めた。

そこはちょっとした宝石屋さんだった。

手ごろな商品から少し手の届かない値段の商品までを扱う、比較的大人しい店。



「入る?」

「・・・うん、時間とらせてごめんね」

「いいって。 俺はと一緒に歩けて嬉しいんだからさ」

「ああ!! これ可愛い!!」



ディアッカの発言をむなしく遮るようにが指差したのは、指輪。

の誕生石が埋め込まれた、珍しいデザインのピンキーリングだった。



「はめてみたら?」

「失礼しまーす・・」

「あ、ちょっと待った!」



が指輪を試そうとすると、ディアッカはそれを止めた。



「何?」

「俺がはめてやるって」

「なんで?」

「なんでって・・お前気づかないのかよ」

「何に気づけばいいのかわかんない」

「はぁ・・・そりゃ、イザークも手こずるわけだな」

「何?」

「何でもない」



ため息をつくように、ディアッカはの左手の薬指に指輪をはめた。

は呆気にとられたように口をぽかーんと空けていた。

ディアッカはそれを見て胸を躍らせたのだった。

しかし。



「ディアッカ・・・」

「なんだ? そだ、俺がそれ買ってやるよ」

「あ、ありがとう・・」

「どーしたの? そんなに指輪見つめちゃって」



確かには指輪を見つめていた。

しかしその真意はディアッカの予想からは遠い場所にあって。



「ピンキーリングってね、小指にするものなんだよ」

「ああ・・・って! え!?」

「ミスっちゃったねー、ディアッカ」

「しまった・・」

「いいよいいよ、気にしてないから! ありがとね、ディアッカ!」



まぁ、の笑顔が見られただけマシか。

そう思いながら渋々指輪を購入するディアッカ。

その店の死角には例の3人組がいて、必死に笑いをこらえていたそうな。




時は進み夕食時。

2人はレストランには入らず、フードコートに来ていた。

ここは俺がエスコートするぜ!!

と、ディアッカはを席へ案内する。

その場所はフードコートの一角にある、夜景が見渡せるテラス。

2人がけのテーブルが2セットだけ置いてある、狭いスペースだった。

しかし、館内の雰囲気からは一変して大人っぽく落ち着いた場所だ。




「さーて、何頼む?」

「この雰囲気でラーメンとか空気読めてないよね」

「まーいいんでない? 俺は気にしないよ」

「いや、そーゆう意味ではないのですが・・・」

「せっかく2人きりなんだしさ、ときめいてみない?」



いきなりなディアッカの発言に、も驚きを隠せないでいた。

その反応に満足したディアッカは、本格的にを口説きだす。



はさぁ、キスしたことある?」

「はぁ!?」

「無いの?」

「ちょ、ちょっと待った! なんでこういう話の流れになったの!?」



は椅子から立ち上がった。



「俺がしたんだけど」

「何でそんなことされなきゃなんないのよ?」

「だからさぁ・・・」



相変わらず鈍いな、なんて今更だな。



ディアッカは立ち上がると、を壁際へ追い詰める。

テラスを選んだのはこのことを予期してのことなのか、2人のいる場所は死角になっており、

2人を見るとしたら正面からしかできないというシチュエーションだ。


優しく微笑むディアッカに対し、頬を真っ赤にして俯く

ディアッカは壁に背をつけたの両脇に手をつく。

彼女の顔を覗き込んでも、俯いたままこちらを見てくれない。




?」

「な、何?」

「大丈夫か?」

「誰のせいだと思って・・・!」



そう言うついでにディアッカと視線がぶつかる。

今日、手を初めて繋いだときのように。

はディアッカの視線に吸い込まれるように魅入った。


するとディアッカは一瞬のうちにへキスを落とした。



「っ・・!!」

・・・」



もう一度ディアッカがへ顔を近づけた。



「・・んっ・・・ぁ・・・」



にとって初めての深いキス。

全身の力が抜けるように数十秒間ディアッカに身を任せたは、

その行為が終わるとディアッカに抱きしめられる体勢になった。

すると向こうから、プラチナブロンドの髪を持つ王子が走ってくるのが見えた。



「ディアッカ、貴様!!!!!」



テラスの入り口から、イザークがものすごい形相でこちらを睨む。

その顔のままこちらへつかつかと歩いてくるものだから、その眼力によって動くことすらままならなかった。


先ほどのキスを見られたかと思うと恥ずかしくて。

ディアッカのせいではイザークと目を合わせられず、彼の胸に顔を埋めた。

ディアッカもを守るように抱きしめ返した。



「・・・・・ディアッカ・・」

「な、なんだよ?」

「お前、が好きだったのか・・」



怒るかと思えばこれかよ。



「ああ、きっとお前が想ってる以上にな」

「貴様に俺の精神面についてそう簡単に語られても困る」

「で? 何しに来たんだよ?」

「なに?」

「だーから、何しに来たのかって聞いてんの」

「・・俺は・・・・・」



言うべきか言わざるべきかと迷うイザーク。

その背後にはニコルとアスランの姿が見える。



「俺が話す。 ニコルはイザークを頼む」

「なっ!? お前に頼まれる筋合いなど無い!!」

「いいから黙って!」



ニコルの一喝で場を鎮めると、アスランはディアッカに話し始めた。



「とりあえず、を返せ」

「そいつは本人に聞いてくれよ」



アスランはに近づくと、肩を優しく叩く。



?」

「・・・・アスラン」

「大丈夫か?」

「うん、だいじょぶ」

「とりあえず、椅子にでも座っててくれ」

「・・・・・・はい」



を座らせた後、ディアッカは真実を知らされることになった。



「ディアッカ、これはクルーゼ隊長がを楽しませようと思って企画したんだ」

「知ってるって。 俺も話は一緒に聞いてただろ?」

「黙って聞いててください。
 その後僕らは隊長に言われたんです。『が手を出されないように見張れ』って」



その言葉には表情を一転させた。



「隊長が・・・?」

「ええ」

「ったくあの隊長は・・・・」



のその台詞には、あからさまに怒りがこもっている。



「ちょっと文句言ってくる!!」

「あ、ちょ、おい!」



声を掛けるディアッカもむなしく、彼女は隊長の待つヴェサリウスへ帰っていった。

取り残されたザフト赤服4人は、互いに顔を見合わせた。



「まぁ、結局悪い虫はディアッカでしたね」

「俺そんなに悪いことしたのかよ!?」

「貴様・・!! 今まで俺に何故黙っていた!!?」

「イザーク・・・」

「なんで、俺ばかりがお前に頼らねばならん!!」

「・・それって、照れ隠し? 隠れてないぜ」

「・・・うるさい!!」






に何度言われても改心しないクルーゼのせいで、

このような事件は今後も多発することとなった。

だがその都度がディアッカと行動を共にするのは、クリスマスがきっかけなのかもしれない。








































「お前のファーストキスってさ、誰が持ってったの?」



ふいに俺はきいてやる。

その度にお前はいつも頬をこの上なく紅く染めて俯きながら言う。



”ディアッカ”


お前が俺を呼んでくれるのって、悪くないぜ。



「あたり。 またしてやろーか?」

「えっ!?」

「冗談。 ・・・・なんてね」



不意打ちのキス。

なんでお前とだとこんなにドキドキするんだろうな。










・・・・ああ。

そうか。






俺はに・・・・・・・・惚れてるんだったな・・・。




































あとがき


いやぁ、クリスマス夢02弾!!
ザフトレッドの選択夢です!
最初はディアッカからです!
なんでかって・・・手が早そうだからですよ。
エロスマンはやっぱり手が早いですねぇ。こんなの書いたの初めてかもしれなひ;
さて!
次はイザークを書いてきます。彼はまっすぐで素敵なキャラですね。
智一さんにぴったりです。

ではでは、こんな駄文をここまで読んでくださってありがとう御座いました!!!


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