AMICUS-アスラン-










「じゃあアスラン、私もお墓参り行ってもいい?」



アスランは目を見開くと、すぐにいつもの柔らかい表情になる。

『ありがとう』

そうに告げると、内心では勝利ポーズをとった。

今回はイザークよりも、アスラン自身の親への愛情と、同情をそそった言動の勝利だ。



「25日の午前中、迎えに行くから」

「ん。 分かった、ありがとね」

「ああ」



彼は段取りだけを整え、その場は一時解散となった。


















12月25日。

アスランは親同士も仲が良かったこともあっての家を知っていた。

そのため今日はエレカで迎えに行った。

インターホンを鳴らすと、の母親の声が応答した。



「こんにちは、アスラン・ザラです」

「あらアスラン君、久しぶりね」

「ちょっと待っててって言ってー!」

「もう少し待ってて頂けるかしら?」

「ええ、分かりました」



遠くから聞こえるの声をほほえましく聞きながら彼女を待つ。

しばらくして出てきた少女は、柔らかい笑みと共にふわふわした装いでアスランの前に出てきた。



・・・いいな、すごく似合ってる」

「ふふ、ありがとう」



そう言って微笑む彼女はまるで天使のように見えた。

クセのある黒髪も、ふわふわのマフラーも、全部。

そんなを夢見心地でエレカに乗せ、供えるための花を買いに行く。

向かう先は、の所望するショッピングモール。



目的地に到着すると、花を買いに行く。

アスランがと選んだのは菊の花だった。

日系であるは墓参りの度に菊を買い、墓前に供えていたのだった。

ひととおりアスランの用事を済ませると、に問うた。



「何か見たいものはある?」

「・・ううん、ちょっとのぞきたかっただけなの。
 ほら、活気のある場所って・・いるだけで元気になれるじゃない?」

「そうだな」



同感だ、とアスランはに微笑み返した。

しばらく2人でモール内を見て回る。

アスランは目についた喫茶店の前で足を止めた。





「ん?」

「少し休憩しないか?」

「あ・・・ゴメンね、疲れさせちゃって」

「違うって、俺がと話したいだけだ」



そう言って半ば強引にを連れて行った。

店内に入り、壁際の席へ案内される。

2人は向かい合った状態で席についた。



「・・・・」

「・・・・」

「・・・

「どした?」

「いや、なんだか元気が無いように見えたんだ」

「そ、そんなこと無いよ!」

「あるだろ」

「うーん・・・あんま言いたくなかったんだけどなぁ」

「なにかあったのか?」

「違う違う、アスランってさ・・ほら、ラクスと婚約中なのにデートまがいのことなんていいのかなーって思って」



軽い気持ちで言ったのだろうが、アスランはしばらくその場で黙り込む。

少しするとは自分の発言に我に返る。



「ごめん、こんなトコで言う話じゃないよね・・」



するとアスランはゆっくりと右手を上げ、

の頬にそっと手を添えた。



「・・・・・え?」



が状況に気づいたときには、もうアスランはテーブルに頭を打って倒れ掛かっていた。



「ちょっ・・アスラン!? アスランッ!?!?」


































どこかの・・部屋だ。

俺は・・・



「・・ん・・・・・」



・・?



朦朧と見える少女はアスランに声を掛け続ける。

その表情は必死そのもので。

アスランの名前をひたすらに呼び続けている。


ふと、アスランの頬に雫がこぼれて舞い降りた。


彼女の、涙だった。



「・・・・ぁ・・」

「!?」

「・・・・・・?」

「アスラン!」

「俺は・・」

「起きれる?」

「・・ああ」



そして重たい自身の体を起こす。

アスランは布団を被っている。

辺りを見回すと、障子に畳、床の間の皿にはピンク色をした小さな花が咲いていた。



「ここ、私の家」

「そうか・・綺麗な部屋だな。 みたいだ」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ、アスラン」



そうか、と過去を振り返る。

の頬が柔らかそうだと思って手を伸ばしたら、急に重いものがのしかかったような感覚になった。

それで最後に見たのはの焦った表情だったんだ。




「俺・・病気なのか?」

「熱だって、しかも結構重いみたいだよ」

「・・・・・・そうか」

「『そうか』じゃないでしょ・・・もう」

「心配・・・かけたんだな」

「ホントだよ! 私、レノアさんだけじゃなくてアスランのお墓にもお参りしに行かなくちゃいけないかと思って・・」

「はは・・心配性だな・・」

「アスランがのんきなんだよ」

「そうか?」

「はぁ・・自覚無いんだね、こりゃあラクスも困ってるんじゃない?」



『ラクス』

それは最後にが言っていた名前。

それを聞いたアスランは急にを抱き寄せた。

・・・・と言っても、実際はに抱きついているような構図になるのだが。



「ちょっ!?」

「ラクスは関係ない」

「何!? よしお!?」

「ああ・・おっぱっぴーだ」

「はぁ」



ため息をつくとはアスランの頬を両手で包む。



「今は、ゆっくり休んで」

・・・」

「何かあれば何でも言ってよ、もう明日からヴェサリウスに戻らなきゃいけないでしょ?
 お腹すいたり、何か欲しかったら私が運ぶから」

「・・ありがとう」



確かにアスランは自身の異常を感じていた。

体は重力が通常より大きいかのように重く、体を起こしただけで頭がくらくらした。

その上思考回路も若干いかれているのだろう。

何故かがいつもより可愛い。

自分のためにここまで平常心を乱している彼女を、今まで見たことがなかった。




「・・今日くらいは・・・わがまま言ってもいいよな・・・?」

「仕方ないなぁ。 今日だけだよ? 弱ってるアスランのためだからね」

が欲しい・・」




「は?」



こんなに元気だったっけ?

布団の中に引きずり込まれるはそんなことを思った。










































「メリークリスマス」



至近距離で囁かれるアスランの声に何も言えなくなる。

アスランはそのまま自分の唇をのそれに押し付けると、彼女の火照った顔を見て微笑んだ。

そして驚かされっぱなしのは、






「ちょっと・・熱でも移ったらどうしてくれるのよ・・・」






そう言ったそうな。




































あとがき


アスランだー。
改めてアスランを見るといつだって素敵なんですよねぇ・・・
ツボです。ツボ。
なんだかついにガンダム祭りみたいになってるクリスマス企画ですけど、
なんとかネオロマに路線を戻さねば・・・!!
そしてこの作品でやっと分岐夢「AMICUS」が終わります。これは「友達」とゆう意味です。
・・・あんまり関係ないような気もしますが;

ではでは、こんな駄文をここまで読んでくださってありがとう御座いました!!!


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