俺なりに
あいつは、知ってるんだろうか。
なぁ、俺って・・・変わった・・のか・・・・?
部活のさなか、ふと聞こえてくるヴァイオリンの音に惹かれて、その音に聞き入った。
たぶん日野だ。
春のコンクールで普通科から参加した初心者の天才。
なつかしいな、なんて思うほど時間は経っちゃいないが。
改めて思い返すとつい最近の出来事のように記憶が鮮明だ。
「土浦先輩、駄目ですよボーっとしてちゃ」
そう言ったのはサッカー部のマネージャーで1年の。
ちょっと真面目すぎて自分に問題を抱え込むところが彼女の悪い癖。
だが先輩といえど注意をきっぱりと促すような点は、彼女の魅力の1つだ。
「あ? ・・・ああ、悪い。サンキュな、」
「どういたしまして、先輩」
か。
おかしいな、コンクールがあったときはこいつのことなんて本当に名前も覚えてなかった。
最近・・妙にこいつに関する想い出が増えた気がしてる。
授業中、登校時、それに部活。
「・・・なぁ」
は少し長い髪を翻して振り向いた。
ウェーブのかかった髪が妙に大人っぽくて。
「なんですか?」
「俺達・・よく会うよな」
「・・そうですか?」
「いや・・違うならいいんだが・・」
「急にどうしたんですか?? なんか変ですよ、先輩」
が映えるためにあるような微笑みを浮かべて、
冗談っぽく聞き返される。
俺は、そんなに変なことを言ったのか・・?
「なんか、の記憶が多いっていうか・・」
「えっ!?」
急に恥ずかしくなって、口ごもった。
なんでこんなこと言ってんだ、俺。
「あーやっぱパス。こんなのガラじゃないよな」
「ホント先輩どうしちゃったんですか〜」
「いや、気にするなよ。 じゃあ練習戻るわ」
急いで練習に戻った。
『なんでガラにもなくあんなことを言ったのか』
そんなことを考えながら練習していると、あっという間に時間なんて過ぎていった。
帰り道、親に頼まれた買い物をこなしている間も。
夕食を食べている間も。
ずっと思い返していた。
なんで・・?
ま、薄々感じ取ってたんだろうな。
きっと好きなんだ。
『好き』っつう感情は、俺を弱気にさせるから苦手だ。
昔っから・・・俺はそうゆう感情に疎い。
ま、いつも女子からは『怖い奴』だって思われてたらしいからな。
・・・・そんなにしょっちゅう怒ってるわけじゃないんだが。
そうゆうわけだから、俺は誰かを本気で好きになるなんて考えられなかった。
中学で1回付き合った彼女も、自然と俺の前からいなくなった。
けど、のことは・・・
こんなにあっさり受け入れる俺が信じられなくて、まだ練習にも身が入らねぇ。
厄介だが、心地いいもんだな。
数日後、俺は部活帰りにを呼び出した。
「好きだ」
全然なれない言葉だ。
は顔を真っ赤にして俺を見てくる。
「先輩・・」
「いや、そんなに深く考え込むなよ・・・俺が悪いみたいだ」
顔を真っ赤にした上、は泣き出してしまった。
どうも泣かれるのは苦手だ。
どうしたらいいのかもわからねぇ。
「泣くなよ」
「・・・っ嬉しく・・て・・」
「じゃあ笑っとけよ、泣かれるのは・・・困るから」
「・・・・・・うん」
なんで・・こんなに素直になれるのか、
俺にこんな勇気があるなんて知らなかった。
こういうのも、いいよな・・・・・
俺なりに。
「お願いだから、泣くなよ」
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真崎蒼華様へ
非常に遅れましてすみません・・・;
なんとか土浦に惚れさせてみました。
なにしろ視点が急に土浦オンリーになってしまったので読みにくいかもしれませんが・・・
どうか貰ってやってください。
では、真崎様が幸せになることを祈っております!
H19,5/20 柚菜
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