虹に変えて
単調な声でアナウンサーが今日の天気を告げていく。
「本日は全国的に台風の影響で雷を伴う豪雨の恐れが・・・」
学校へ行く前のの家は大忙しだ。
2人姉妹の長女であるは地元でそこそこ頭の良い進学校に通う高校生だった。
だがその学校への遠いことといったら、教室に入った瞬間机にうつ伏せて寝たくなるような遠さで。
しかも・・・
「あ゛ーまた雨ー?」
一家の長女は雨が大嫌いだった。
なぜなら、電車は微々たる遅れを生じ、バスが混むうえに傘という荷物が増え、髪ははね放題になること。
学校が遠いのは致命的だった。
でも、そうも言ってられない。
は明るい女子高生だから。
「しゃーないなぁ、行って来るわ〜」
がそう言って靴を履くと、家族の見送る声が聞こえた。
鎌倉のとある場所にある高校へと通うにはあまりに不便な位置にある彼女の家だが、
ただ見つけにくい都会の中の田舎のような場所であるため、やけに土地は広くて。
もちろん家も友達に何度『金持ち』だとか『お屋敷』と言われたか分からないような大きさだった。
ただマイナーな場所だから地価が比較的安かっただけなので金持ちでも何でもないのだが。
『まもなく、鎌倉駅〜鎌倉駅〜お降りのお客様は・・・』
は最寄の駅まで自転車で移動。
電車に乗って鎌倉駅まで移動した後バスで高校まで通っている。
だが今日は・・・
「!!」
唐突にかけられた馴染み深い声の先には
「将臣君? 久しぶりーっ!!」
「よっ、相変わらずハネてんなぁ・・・お前の髪」
「将臣君には言われたくないんだけど?」
「お互い様ってことか??」
「まぁね、これから学校だよね?」
「いや・・・ちょっと用事があってここんとこいけてねぇんだよな」
「そっか、じゃあまた今度会えるといいねっ!」
「・・・ああ、そうだな。それとお前に警告しとくぜ。一応な」
「何かあるの?」
「・・・いや、やっぱやめとくわ」
「ふー・・・ん」
「じゃな」
「あ、うん。またね」
唐突に出会ったわりにはあっさりといなくなってしまう将臣の後姿を見ながら。
(まぁ、もともと自分でいろんなところに行っちゃう人だったからなぁ)
そう重く感じるわけでもなく見送った。
「っ!? 今何時よ!?」
ふと雨が降っていることを重く実感してストラップの壊れかけているケータイを取り出す。
時間を見てみると『8:18』という時間。
の高校の開始時間は8:25だ。
「っヤバいぃぃ!!!」
あいつが好きなのは多分、俺じゃない。
あいつに好きな奴ができて、付き合ってるって知ったりして初めて分かるんだな。
俺がどれだけあいつに惚れてたかって。
「なんだ・・・ベタ惚れか?」
ガラじゃねぇってのにな。
これは・・・まぁ、しょうがねぇか。
あいつとはの友達だから仲良くなったんだ。
初めて見たときは綺麗で清楚な見た目と明るい性格とのギャップにビックリしてたっけな。
それが今じゃあこんな状態だからな・・・。
今から軽く10分くらい前の話。
俺はマジであいつに会った。
もう、4年くらい会ってない気がしたんだ。
だからつい声をかけちまった。
返ってくるあいつの声はぜんぜん変わってなくて・・・逆に笑いそうになったぜ。
ついさっきまでこんなに間近にいただなんて、な。
あたしは学校帰りにケータイからショパンの第6番ポロネーズ「英雄」が流れるのを聞いた。
掛けてきたのは将臣君で、電話に出るとすぐに本人を確認した。
「どしたの?将臣君?」
「俺やっぱ、好きだ」
やっぱり。
告白されるといつもあたしは『好きだ』って言ってくれた人が気になりだす。
でも、
将臣君に好きだって言われるとは思わなかったな・・・
好きなんだろうか?
「あたし多分、将臣君に惚れると思う」
「・・・・・・」
「大好きかな、あたし的に」
「違うだろ、俺がカッコいいから惚れたんだろ??」
ちょっとの間の後で切り出した答えは簡単なことだよ。
きっと、友達を大好きなわけじゃなくて。
友達に惚れたから大好きなんだよね。
将臣君はそういう人だと思う。
「あはは、そうかも」
雨が降り出すと思った。
今日は台風の影響で大雨のはずだったんだけどな。
俺の心ン中はマジで雨上がりだぜ。
虹でも出てるんじゃねぇか??
「おい、虹が出てるぜ」
「えっ、どこ!?」
「見せてやるって」
そう言って抱きしめたは小さかった。
抱き返してくるはいつもよりもっと・・・・
なんていうんだろうな、『愛しい』ってヤツだ。
「明日はちゃんと学校きてよ?」
「一応努力はしてやるよ」
あとがき
真唯様に!!
今まで頂いてばかりだったのでサイト完成記念に捧げさせていただきます!