ドキドキするような歌よりも、ドキドキさせられるような恋をあげるよ
「今日からS.M.Sに参加することになった。・少尉だ」
隊長から簡単な紹介とともにS.M.Sのメンバーになった少女。
軍人というよりもアイドルか何かと見まがうような女だ。
背中まで続くクセのあるくねくねした髪に、一瞬シェリル・ノームを想像した。
「・です。
よろしくお願いします」
簡素な挨拶だ。
だが、下げた頭を上げた時の一瞬の笑顔が・・・俺の脳裏から離れない。
それから俺はルカと一緒に宿舎へ戻る。
「綺麗な人でしたね」
「ああ・・・」
「何て言うか、シェリルみたいな」
「銀河・・・いや、S.M.Sの妖精、ってか?」
「あ、ミシェル先輩ってば、そう言ってまた口説くつもりでしょう?
・・・もう、節操無いのもどうかと思いますよ?」
「酷い言われようだな、俺は」
相変わらず手厳しいルカの忠告だが、
俺の頭は素直にそれを受け入れるほど柔軟じゃない。
自分のベッドに寝そべると、かすかに歌声が聞こえた。
それはまるで、妖精のような歌声が。
「誰だ?」
ベランダの扉を開けたままだった。
そこから外に出ると、すぐ空には真っ暗な銀河が広がり、
そこに華を添えるかのようなメロディが流れた。
「あ、こんばんは」
ふいに聴き入っていたメロディが途切れ、代わりに鈴の声が俺に降りかかった。
「こん・・・ばんは。
・嬢」
「ふふ、そんな呼び方しないで下さい」
「ではとお呼びしますよ」
「助かります、えっと、あなたは・・・」
「ミハエル・ブラン。ミシェルと呼んで下さい」
「分かったわ」
外は暗かったからはよく見えなかった。
だけど妙に近い空に酔わされたせいか、そんなことは気にならず、
ただ彼女との間に流れる沈黙さえ心地よく感じた。
「・・・ミシェル」
「なんです?」
「呼んでみただけ」
「そんなに俺が気になりますか?」
「うん。お友達、欲しくて」
「友達・・・俺を?」
「あ、勝手なこと言ってごめんなさい。
オズマさんからさっき聞いたの。
私と歳が近いのはミシェルかルカ君ぐらいだから、仲良くするといい・・・って」
オズマ隊長か。
俺は狙った獲物と女は逃がさない主義なんだ。
友達止まりなのは・・・俺の気が進まない。
「悪いけど、俺は恋人向きだぜ?」
「恋人・・・? ミシェル?」
「君が・・・すごく輝いて見えるんだ。」
「こんなに暗いのに?」
「これは厳しいな、は恋には興味は無いのか?」
すると彼女からの返事はすぐに来なかった。
地雷を踏んだのか−そんな妄想まで頭をよぎった。
「無い・・・わけじゃないよ」
「もう恋人がいるのかい?」
「いないけど、ルカ君に忠告されてるの。ミシェル先輩には気をつけてねって」
「はぁ・・・」
なるほど、ルカのせいか。
道理で警戒されるわけだ。
「は・・・歌が好きなのか?」
「・・・うん。気持ちがいろいろ変わるから。
切ない歌、ドキドキする歌・・・たくさんあるでしょ?」
「・・・いいね、ドキドキするのは・・・俺も好きだ」
「もう、ホントにルカ君の言った通りの性格なんだね。ミシェル」
「手厳しいな、」
「私の攻略は難しいよ?」
「肝に命じておくさ、俺のものになるまでね」
それから俺は何度かと言葉を交わした。
相変わらず手厳しい彼女だけれど、何故か諦めようとは思わない。
どうしても手に入れたかったんだ。
ある日、戦闘後にマクロスフロンティア付近の宙域で推力を失ったVF-25を見つけた。
パイロットは・・・だった。
「ッ!?」
「さん!!」
「・・・」
「ルカ、手伝え!」
「はい!」
は病気でも怪我を負ったわけでもなかった。
俺達はを彼女の部屋のベッドまで運んだ。
をベッドに寝かせ、キザっぽく手を握って彼女の目覚めを待った。
時間が経つにつれて彼女の部屋には俺しかいなくなった。
今のには命を落とすような危険も無かった。疲労が重なったのだろう。
それに加えて、白い肌とやや赤みがかったピンク色の唇が俺を酔わせる。
「っ・・・」
軽く口付けた。
あれだ、眠り姫にキスをすれば目覚めるっていうおとぎ話。
「ん・・・」
「・・・?」
「ミシェル・・・??」
「お目覚めかい? 眠り姫」
ゆっくりと体を起こす。
少し寝癖のついた髪が、俺をそそる。
「」
「ミシェル・・・」
「疲れは取れたかい?」
「うん・・・ごめんなさい、迷惑かけたみたい。ここ、私の部屋だもんね」
「が元気なら・・・って、言いたいところだけど」
「え?」
「少しだけ・・・ご褒美貰ってもいいよな?」
言うと同時に握っていた手を強く引く。
顔が近づく瞬間、は目を閉じる。
それは、俺への了承の合図だと受け取るよ?
その時俺は理性を失った。
少しだけ、と言ったから、ほんの挨拶に。
「んっ・・・・・・」
初めての、のキス。
それは予想以上に初々しいから、俺までドキドキさせられる。
「ん・・・っ・・・っはぁ!」
ようやく解放された唇を指で覆う。
「もしかして・・・ファーストキスだったかな?」
「もう・・・ミシェルってば」
冗談混じりにそう問えば、紅潮させた表情と優しい返事が返ってくる。
ああ、俺達は恋をしているんだ、と。
そう思った。
「」
「ん?」
「逢いたくなったら、ベランダに出るよ。
君が俺に逢いたい時は、歌を歌って?
俺の為に、歌って?」
「・・・・・・・・・うん」
赤らめた頬にキスを落とすと、俺は隣の自室に戻ろうとする。
だがドアの前で後ろから抱きしめられた。
「ミシェル・・・っ」
「どーした?俺がそんなに気になる?」
「うん」
「友達が欲しいの?それとも・・・恋人?」
少しの沈黙の後、俺の肩の辺りから聞こえた微かな声。
「・・・ミシェル」
俺は彼女に向き直って、その小さな肩を抱きしめた。
俺を見る上目遣いのに顔を近づけ、口付ける。
「もう、逃がさないぜ」
は俺の腕の中で、小さく頷いたみたいだ。
あとがき
初めてのマクロスF!!
何がいいって、すべてがいいね!マクロスFは!
シェリル可愛いし神谷ウケるし(笑
なんか、似てないですけどこれから頑張ります。
2008.04.21
BACK