華胥之夢(かしょのゆめ)








「かんぱーい!」



市民ホールからそう遠くないファミリーレストランの一角に、星奏学院の制服をまとった一団がいた。

今日はアンサンブルコンサートがあった日。

1ヶ月近い時間を費やして準備をしたコンサートも終わり、参加したメンバーで打ち上げが催されている。



「でもよかったよね、無事に済んで」



天羽がコップを片手に言う。



「ほんと、いろいろと・・・大変だったしな」



そういうと土浦はに目配せをしてみる。

それに返事をするように微笑むと、も前菜に手をつけ始めた。



「そうだね、でも一番大変だったのは・・さんだよね」

「え? そうですか? 柚木先輩」

「ふふ、これで自覚がないんだから、やっぱりさんはすごいね」

「加地君まで」

「ああ、気にしてしまったならごめんね?」

「大丈夫、気にしてないよ」

「よかった」



会話がひと段落すると、自分の注文したメインディッシュが運ばれてくる。

が注文したのはエビグラタン。

それを見た土浦はあきれ声で話す。



「グラタンか、太るぞ、

「いーの! 今日はカロリー気にしない日だから」

「なんだ、そんな日あったっけ?」

「あるある。最近できたんだよ」

「へぇ、そんな可愛いこと言うんだな」

「な・・っ」



顔を真っ赤にして目を合わせるに土浦も笑う。

するとすぐにグラタンへ手を出し始める。



「ま、久しぶりに緊張することしたわけだし、ゆっくりすればいいさ」

「ん」



の頭をくしゃくしゃと撫でながら言った。


しばらく食事を楽しみつつ会話もそこそこ。

そんな久しぶりにゆっくりできる雰囲気がには心地よくて。



「ふわぁーぁ」



つい、あくびが出てしまった。



「あれ? ちゃん眠いの?」

「ん? あ、天羽ちゃん。 ちょっと・・」



フリードリンクを取りに行った帰りなのか、ちょうど天羽がの椅子の前を通り過ぎようとした。



「まったく、しょーがないなぁ。 ・・・でも疲れてるんだよね」

「・・・・・・・」

「寝ちゃった。 ・・・お疲れ。 あとは頼んだよ、土浦くん!」



そう言って、何も知らずに水を飲む土浦の肩を叩く。

その行動に驚かない筈もなく、すぐに天羽の方を見ると、



「ちょ、こぼすとこだったぜ!?」

「まーまー、気にしない」

「おい、ちょっと、待てよ・・っ!?」



左隣からかかる軽い圧力。

整った寝息を立ててが土浦の肩にもたれかかってきた。

さすがの土浦も頬を若干赤らめているようで。



「おい、

「んー・・・?」

「家の中とかじゃないんだぞ」

「んー」

「いや、もたれないでくれって言ってるわけじゃないんだ」

「・・・・・ぅ・・ん」

「・・・・寝てる、か。 聞いてない・・よな?」

「ぅ・・・・ん・・」



寝ながらも返事をするに思わず笑みがこぼれる。



「ま、お前の目が醒めるまで見守っててやるよ」

「・・・・」



せっかく言った甘酸っぱい台詞すら届かないけれど。



「お前らしい・・か」



愛しい人を見る目でを見ては、表情が綻ぶ。

そして頭をやさしく撫でてみる。

すると。



「あーっ! 土浦っ! ちゃんに何してんの!!」

「こ、これはっ・・変な解釈しないでくださいよ、火原先輩!」

「知らなかったー! ちゃんて・・土浦のことが・・」

「火原先輩!!」



土浦のその声が大きすぎる発言に、その場にいる全員がを見る。

そして2人の体勢に驚く者もいれば微笑ましく見る者もいた。



「土浦・・なんだ、そうならそうと早く言ってくれればいいのに」

「加地! いや、これは・・」

「もう限界なんじゃない? 土浦くーん??」

「こら天羽!」

「え? もしかして土浦くん、僕たちに何か隠してる?」

「いや、何も隠してませんって柚木先輩!!」

「往生際が悪いなぁ、土浦くんは。 もうわたし言っちゃうよ?」

「あ、天羽・・」

「いいね?」

「ダメだ、これは、俺が・・」



そう土浦が腹を決めた時、いい加減周りの声を煩わしく思ったの瞼がゆっくりと開く。

眠りから醒めたの目に映ったのは、自分を眺めるアンサンブルメンバーの視線だった。



「えっ!?!?」

!」

「つ、土浦くん、あれ!? 私・・」

「あ、いや、その、き、気にするな・・」

「ゴメン!!」

「いや、いいって。 それよりもこの状況をどうにかしたいんだが」

「この状況って・・」



どもる土浦に変わって天羽が口を開く。

の隣まで来ると、耳元で小さく状況説明。



『土浦くんがね、ちゃんとのお付き合いを正式に皆に発表する会をしてるんだよ』

「え・・・・、えぇーっ!?」

・・」

「ま、ホント!?」

「マジ。 マジすぎる」

「そ・・・っか・・」



しばらくの沈黙の中、志水が口を開く。



先輩と、土浦先輩は、仲がいいですよね」

「・・・・そう・・だね」

「そうだよ、土浦ってば皆に黙って ―」

「はぁ、」

「土浦くん?」




「ええ、付き合ってますよ。 俺たち」



なんだかそう言われたのが妙に感動して。



「・・ありがと、土浦くん」



何故か静まった周りの人々を横目に、天羽が動く。



「ごちそうさま、二人とも」



そう言って二人を写真に収めるべくシャッターを押す。










































後日。



「はい、土浦くん」

「天羽か。 この封筒はなんだ?」

「まぁまぁ、開けてみてよ」



封をしていない封筒の中身を開ける。



「こ、これって・・」

ちゃんの寝顔だよ」

「何撮ってんだよ!?」

「あらー照れちゃって。 ちなみにこっちはツーショット(ちゃんもたれてるバージョン)」

「・・・・・」

「土浦くん?」

「・・・サンキュ」

「どういたしまして! これからもこの報道部の天羽をよろしく!」

「・・・・・ああ」






それから土浦は天羽からもらった写真を家の机の上に飾ったそうな。


















あとがき

申し訳ない!!
なんだこの話ー!
なんかおかしいです。きっとブランクのせいです。それ以前に自分のスランプのせいですorz
なんとか受験の間もこのサイトを守りきってみせますので!(なんか話の流れ変になってるけど!
ここまで読んでもらってうれしいです!
ありがとうございました!!

2008.03.19

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