Golden Afternoon







良く晴れた休日の、お昼時。
僕と彼女は、今日もアンサンブルの練習を2人でする。
海が見える臨海公園は・・・僕と彼女のためにあるかのようにキラキラとして見える。

・・・なんて、僕はいつもこんなことを考えてる。
君と一緒にいられるからね、さん。


ここは、僕がさんを見つけた場所。
春は、僕がさんを見つけた季節。
だから好きなんだ、この場所。


「少し・・休憩しない? そろそろ疲れが出る頃じゃないかな」

「うん、ちょっと疲れたみたい・・・加地くんは大丈夫?」

「僕は元気だよ、君と一緒にいられるなら・・いつでも元気になれるんだ」


頬をほんのり赤く染めて黙り込む彼女。
それは、僕のための行為なの?
幸せすぎて、どうにかしそうになるんだ。
だから僕はいつも言うんだ。


「どうしたの? そんな顔をして」

「だって、加地くんが・・・」

「僕はね、君のそんな素顔が見られるだけで、十分幸せなんだ」

「・・・・ほんと??」

「うん。 僕を幸せにしてくれて・・・ありがとう」


こんな会話を続けていても、ずっと表情を変え続ける。
そんな彼女が愛しくて・・
でも彼女は僕なんかには手が届くことの無いような人だから・・・
僕は精一杯彼女を幸せにしてあげたいって思うんだ。
・・・・今だけ、かな。
ずっと・・・こんな日常が続けばいいのに。


時計を見ると、もう1時を過ぎていた。
僕は隣でヴァイオリンを弾いているさんにランチを勧める。


「お昼ごはんでも食べない?」

「うん」


向かったのは臨海公園にある、小さなテラス付きのオープンカフェ。
爽やかな風が吹き抜ける席に座ると、ウエイターがメニューを持ってきた。
そこに書かれた文字を見て、僕は彼女に謝罪をする。


「ごめん、もうアフターヌーンティーの時間だね」

「ううん、私が練習してたから・・こんな時間になっちゃったんだと思う」

「そんなことないよ。 もしそうだとしても、全然迷惑なんかじゃないよ」

「あはは、加地くんってお昼ごはんより一服した時のお茶の方が似合ってる」

「・・・そうかな?」

「うん。 加地くん、初めて見たとき優雅な人だなぁって思ったの」

「今は?」

「今? ・・・うーん、わからん」


本気で考え出してしまった彼女は、しばらくしてオーダーを決めようとメニューを手に取った。


「ダージリン、アールグレイ、アップルティー、ストレート・・・メジャーなのはなんでもあるね」

「私は・・・・やっぱストレートで」

「そう? 僕はアップルティーでお願いします」


『かしこまりました』なんて言葉を添えてウエイターは席を離れる。
もしかして、僕たちは恋人同士に見えるかな?
とても幸せだよ。
いつもより風景が光って見える。


「すごく幸せ」


彼女が言う。
そんなこと言ってもらえるなんて、僕は幸せ者だね。


「それは僕の台詞だよ」

「え?」


驚いたように僕のほうを見上げる。


「大好きな君のヴァイオリンと紅茶、それに僕の目の前にはさんがいる。
 こんなに幸せな気分にしてくれたのは君なんだ」

「もう・・・」


また黙り込む。
そして僕は言う。


「ありがとう」

「・・・こちらこそ」


恥ずかしがって会話が続かない。
でも、僕は不満じゃないよ。
僕にとっては心地の良い沈黙なんだ。

それから間もなくウエイターが紅茶とスコーンを持ってきた。


「いただきます」

「これでお腹いっぱいになるかな、加地くん」

「僕?」

「うん」

「またそんな可愛いこと言って。 大丈夫、胸がいっぱいだから」

「そ、そう・・・ありがと」


僕はずいぶんとさんに見とれていた気がする。
不思議そうにこちらを見る。


「どしたの?」


その瞬間、僕はいい事を思いついたんだ。


「そのストレートティー、おいしい?」

「うん!」

「ちょっと味見してもいい?」


少し戸惑ったような表情を見せたけど、すぐにストローを僕に向けてくれた。
でもそれは必要ないんだ。


「!!」

「ご馳走様。 おいしいね、このストレートティー。 今度はストレートにしてみようかな」


僕は彼女に口付けた。
さんからは、ほんのり甘くて・・ちょっと苦い味がした。
今の僕みたいで、自嘲の笑みがこぼれちゃうけど・・でも幸せ。


「加地くん・・・」

「ごめん! 嫌だった!?」

「・・・・・違うの・・・・・・・嬉しくて・・」

「え!?」

「・・・・・」

「それって・・・・」

「大好きだから、加地くんが」

・・・・」


思わず名前を呼んでしまう。


「僕は君が好きで、好きで、大好きで・・・・もう、おかしくなりそうだ・・・・」

「だ、だいじょぶ??」


困惑する君だって、いつも愛しく思う。
知ってた?
きっと知らなかったでしょ?
僕はいつも・・・こんなことばかり望んでいて、いかれた男なんだ。


「今日は・・・綺麗に晴れてる」

「・・・うん」

「さしずめ『きらめく昼下がり』ってとこかな・・」

「あは、そんな感じ」

「よろしくね、


そう言って僕はの手をとった。


「これからどうする?」


相変わらず恥ずかしがって喋れなくなっている


「そうだな・・・とりあえず指輪でも・・・見に行く?」













2つもたれ合ってるヴァイオリンケースとヴィオラのケースが見守る中。
こんな日常、続くといいな。

今日が俺の『きらめく昼下がり』






























あとがき

さて、なんかスランプ抜けた気分で清清しいです。
てかアンコールが欲しいです。
コルダ2アンコールのサイトみて加地くんにキュン死したので即書き上げました。
タイトルの『Golden Afternoon』は最近大好きな「ゴッドチャイルド」の、
1話「いかれたお茶会」に感化されて不思議の国のアリスから拝借。

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