私の大好きな君へ
9月下旬。
健全な高校2年生のにとって、この月は1年で一番忙しい時期でもある。
何が忙しいって、夏休みの間に溜まった宿題をやっと消化したらすぐにある期末テストである。
30点未満の生徒は放課後補習を次のテストまで義務付けられるというペナルティ付きの恐ろしいイベント。
何が何でも30点越えをしたいは、テスト期間中では人がめったに来ない毎日図書館にこもって勉強に明け暮れた。
「の゛ーっ!」
「なんじゃこらーっ!」
といっても、ほとんど毎日叫ぶばかり。
これではただの近所迷惑である。
コレには図書委員長である猪八戒も困るばかりだった。
「」
「なんすか?」
「静かにしてくれませんか?」
「う・・・・・すまねぇ」
一瞬にして大人しくなったの素直さに八戒は驚き、
「一緒に勉強しませんか?」
「マジか! そりゃありがたい!」
「あはは、そんなに順位低いわけじゃないでしょう? は。 むしろ学年2桁はあるでしょう?」
「この前まではあったけどさ、夏休みは忙しかったからね・・・」
「それは生徒会のメンバーは全員そうですよ」
「でも頭いい子ばっかりなんだもん」
「そんなことありませんよ、悟浄と悟空なんか補習受ける気でいますからね」
「あの2人は例外だね」
「あはは」
は生徒会のメンバーであり、八戒もそうだった。
生徒会は毎年9月上旬に行われる文化祭の総元締めだ。
そのため10人強いるメンバーは夏休みの間毎日学校に通い、準備をする。
この過酷な仕事は彼らの時間を減らしていき、最後には課題が提出に間に合わない、となるのだ。
だがその反面メンバー同士の絆は強くなり、ついに恋人同士になるケースは毎年恒例だ。
と八戒も、その部類に入る。
つまり2人は俗に言うカップルというやつだった。
「『あはは』じゃないって! 勉強! 忘れてた!!」
「、ここは図書館ですから」
「ああっ!!! ごめん!」
「じゃ、はこれから何やるんですか?」
「もちろん数学。」
「文系なのに?」
「文系だし数学はホント苦手なの・・」
「じゃあ、問題集でもやりますか?」
そんなこんなで時間はあっという間に過ぎていく。
幸せであればあるほど時間の経過は早く感じるものだから。
ふいに、5時を告げるチャイムが鳴った。
「・・・・もう5時ですね」
「んー・・・」
「勉強しながら寝ちゃうなんて、僕に襲って欲しいんですか? ?」
「・・・・・・」
「全く、この子は・・・」
「・・・・・・・・」
「帰りますよ、」
耳元でそんな台詞を囁いてみる。
「のわ゛っ!?」
驚いて飛び起きたは慌てて八戒の方を見る。
「もう5時ですから」
「え、あ、もう5時!?」
「なんか、ごめんね、勉強するとか言っといて寝ちゃって・・」
「大丈夫ですよ、僕はのかわいい寝顔なんかも見れちゃいましたから」
「そ、そう・・・・」
実は人並み以上に照れやな彼女は、時々口ごもることがある。
それは、決まって幸せである時。
「・・」
彼女の名前を囁きながら頬に手を寄せる。
「ストップ!!」
「?」
「と、とりあえず、帰ろう??」
「あはは、照れやですねぇ」
「知ってるでしょ?」
「一応ね」
鞄を持って階段を先に下りていく。
ふいに後ろへ振り返る。
「また数学教えてください」
そう言っただけなのに、一瞬だけ呼吸が止まりそうになる。
彼女があまりにも眩しすぎて。
は階段を登り、踊り場にいる八戒に近づき、頬にキスを落とす。
「た、誕生日・・・・おめでと!!!」
顔を真っ赤にしたはそのまま下駄箱へと全力疾走していった。
一方八戒はというと、
「・・・・今日は帰せませんね」
そう一言だけ告げて、ゆっくりとの後を追った。
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