白龍
そこで珍しいことに、三蔵が自ら名乗り出た。
「俺達はこの桃源郷の治安を元に戻すために、三仏神に遣わされた。
お前も連れてけって三仏神が言うんでな。
一緒に行くぞ」
「あの・・・「三蔵、いきなり言うと分かってもらえませんよ。」
結局、八戒が仕切ることに。
だが誰よりも優しい目をした白龍は、神子を抱いたまま言葉にできないような気持ちを、
あふれそうな気持ちを神子への言葉にして送った
「神子!!神子と話せて、私は嬉しい!」
「そうだね・・・白龍。
私も嬉しいよ・・・久しぶりだね・・・」
だがの身体は相変わらず冷え切っていた。
それを見越した八戒が、誰より先に行動を起こす。
「三蔵、このままじゃ神子さんがくたばっちゃいますよ!?
一度温かい場所に! 冷え切っちゃってます!」
「・・・ああ」
八戒の言葉に驚いて、悟浄と悟空は同時にを抱き上げた。
もちろん2人で1人を抱き上げようなど、できるはずも無く。
「いたッ!」
「ッて〜!」
2人は共に頭を打っていつもの言い合いが始まるかに思えた。
が。
「悪ィ!悟浄!
ここは俺の役得ーッ!」
悟空がを奪取し、悟浄を後に寺院から突っ走って出て行った。
もちろん、小さな白竜を肩に乗せて。
「ッたく、しょーがないわねーウチのお猿ちゃん」
「死ね」
「ほら悟浄!余裕かましてないでとっとと悟空のサポートです!」
三蔵と八戒も悟空の後に続いて走り出す。
ついでに『余裕かまして』いた悟浄に一発おまけを添えて。
「へいへい」
「神子様!!!!」
廊下を駆け抜ける悟空を見て、何人かの御坊は神子に気づいた。
「やっべーッ!」
「はぁっ、はぁっ・・・」
それを黒と見たのか、悟空は更に加速していく。
の呼吸がさっきよりも確実に荒くなっていく。
しかしこの寺院にこれほどまでに長い廊下があったのだろうか、もうかれこれ5分は走り続けている。
さすがにおかしいと思い始めた頃、目の前には広間があった。
「あ・・・れ・・・?
ここって・・・さっき・・・」
悟空がを抱え、が白竜を抱えた構図を崩さぬままその場に立ち尽くす。
しばらくすると、背後から三蔵と八戒、悟浄が追いついた。
「なぁ三蔵!
ここってさっきまで俺達がいたトコだよなッ!?
ほ・・・ほらッ!溶けた氷だって在るし・・・ッ!!」
「結界でしょうか」
「知らん」
「じゃ〜あどうすんの?三蔵様?」
一瞬この寺院を崩壊させて外に出るか、との考えが三蔵に浮かんだとき。
後方から静かな足音が聞こえる。
「・・・・・・てめぇ」
そこにおわすは観ちゃんこと、観世音菩薩様。
とっても尊い菩薩様だった。
「よう。
久しぶりだな、てめぇら」
「・・・・・・は?」
「とにかくだ。よくこいつの封印を解いてくれたな。
だが。
このままじゃこいつは死ぬぞ。」
「やっぱり・・・ですか・・・」
「そりゃあそうだな。
良く考えてみろよ?なんたってこいつは100年モノだからな」
実際そうだ。
実際には今冷え切って体温がどんどん下がっていく一方で、
こちらにはその事態を改善するための策さえ無い。
「なら・・・どうしろってんだ」
「フン、こいつだ。」
と言って観世音菩薩が指差したのはの抱きかかえている小さな竜。
白竜だった。
「こいつに頼んでみるんだな。
んじゃ、楽しみにしてるぜ〜八葉ども」
「八葉・・・?」
そんな三蔵の質問に答えもせずに、観世音菩薩はいつのまにか姿を消した。
そして三蔵一行が見たのは悟空ではなくて、悟空の抱えているの側にいる白竜。
悟浄はゆっくり白竜に近づいていった。
「あ〜白竜様ッ!
どうか神子ちゃんを助けてやってください!」
「ちょっと悟浄!こんな時なんです。ふざけてる場合じゃ・・・」
八戒の説教が始まるかと思われた時、白竜は白龍へと変貌した。
誰よりも心配そうなのは白龍だった。
「悟空、神子を私に渡して」
悟空は言われるままを渡す。
再び白龍はを抱きしめて、手を強く握った。
「はぁっ、はぁっ・・・」
「神子・・・」
そうすると白龍からは純白の気が溢れた。
「・・・はく・・・りゅ・・・う・・・?」
「そう。あなたは私の神子。
起きてみて、もう大丈夫だから」
誰も言葉を発せずにいた。
あまりにも神々しい白龍の気と、その白龍と意思の疎通ができたという神子。
妖怪を殺し、血に染まった両手を洗い流して生きる彼らとは次元が違う。
だがそんな差のある相手に、4人は惹かれずにはいられずにいた。
「ッ白龍!!!」
「どうしたの?神子」
「また・・・私なんかの為に力を・・・?」
「あなたは私の神子だから。
絶対に守るから」
は以前の白龍の事を思い出し、冷え切った顔に温かいモノが流れた。
『こうしてるうちにも、白龍の力は無くなっていく。』
現在から考えると、もう100年も前の、遠い話だった。
「ありがとう・・・っ」
そんな状態で。
もう動けずに居るの側に優しく声をかけたのは八戒だった。
「初めまして。僕は猪八戒といいます。
あなたのお名前、まだ伺ってませんでしたよね?教えていただけませんか」
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あとがき
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どう考えても花梨ちゃんはオッドアイじゃなかったですよね。
まぁとにかく、皆様に愛されるヒロインを目指して頑張りたいと思います。
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