寝台争奪戦
「も・・・・とみ・・さん・・・」
とっさに出たその言葉に悟空が問う。
「ん? モトミサンって・・なんだ?」
「・・・・・・」
「なぁ、どうしたんだよッ!?」
「・・・・昔の・・」
「昔の・・?」
「八葉だったひと・・・・だよ」
それが真実。
絶対的に変わらない事実なのに、なんで。
言うだけなのに、どうしてこんなに胸が苦しいのだろうか。
急に表情から笑顔が消えたに見かねた八戒は、悟浄のことなどかまわず動いた。
「すみません、おばさん。
少し疲れてるみたいなので、休ませてあげてもいいですか?」
「あ? ああ、部屋かい。ちょっとお待ち」
2人が通されたのはベッドが1台だけ置いてある部屋だった。
『そこで休め』とでも言うように置かれたベッドに、八戒はに休むように促した。
そして八戒もベッドに座った。
「どうしたんですか?」
「ううん、ちょっと・・・昔のこと思い出したんだ」
「八葉ですか」
「まあね」
八戒は表情を曇らせる。
同時には、『八葉』という言葉を声に出すたびに胸が苦しむ。
こんな感情、何年ぶりだろう。
「だからそんな顔をしてるんですか?」
「え・・・?」
「とても暗い顔。辛そうな、幸せそうじゃない顔」
「そんなに酷い顔してるんだ・・・」
そして自嘲の笑みを浮かべる。
「そんな顔しないでください。
僕らは、これからずっと一緒に戦っていく身なんです。
今の貴方を見てると、すごく胸が苦しいんです」
「・・・・・ごめん・・」
「貴方のせいですよ?これでも僕は繊細なんですから」
「・・・・・・・・」
言葉に詰まった。
その瞬間からしばらく沈黙が続いた。
「・・・・・・・あの・・さ、悟浄、大丈夫かな」
「悟浄ですか?
どうでしょう、今ごろは旬麗さんでも口説いてるかもしれませんね」
「相変わらずだね」
微笑みと一緒に吐き出した言葉に、八戒も優しい笑顔を浮かべた。
そして立ち上がると、閉めきられたカーテンを開けた。
窓から見える空は、どんよりと雲でくすんでいたが、月だけは宝石の如く輝いていた。
「さて、じゃあ僕らも戻りましょう。三蔵辺りに怒られかねません」
も頷くと、部屋のドアを開けた。
それと同時に。
「ーっ!!!!」
妙に明るい声は、悟空のものだった。
「どうしたの?」
「おばさんがさァ、泊まってけって」
「もう遅いから、お言葉に甘えさせてもらおっか」
「やったーッ! なぁ、部屋割りどうする????」
そんな朗報に喜びつつベッドの上で飛び跳ねる悟空をよそ目に、再び部屋のドアは勢いよく開かれた。
「ほらほら、布団敷くから出ていきなっ!」
伴おばさんの威勢の良い声によって3人は部屋から追い出された。
数時間後。
やっとこさ布団を敷き終わったおばさんは三蔵一行を部屋へ招き入れた。
そこには布団が3組と、特等席と言わんばかりにベッドが1台。
「おい・・・この俺に床で寝ろとでも言うんじゃねぇだろうな?」
「ま、その辺りはお互い様ですよ。ね、悟浄」
「そんじゃ・・・ま、カードといくか??」
「なぁ、ちょっと待てよエロ河童!! はどこいったんだ?」
ふと4人が目をベッドに移すと、すでに可愛らしい寝息を立てている眠り姫がいた。
はぁー。
4人同時にため息をつくと、
「さて、特等席のベッドにはチャン付きってことで」
「カードやんの!?」
「いいからとっととカード引きやがれ」
「「「「・・・・・・」」」」
いつになく真剣な視線をカードの積まれた山に送り、
乞い願うように悟空がカードを引く。
裏返してカードの目を見ると彼の黄金色の目は更に輝きを増す。
「あ。やりぃ!! 13!! 俺の勝ちーっ!」
立て続けに悟浄もカードを引く。
「バァーカ。数が多けりゃいいってモンでもないっつーの。
こっちはA(エース)なのよ!!!」
「何ィ!!?」
そんな中、不敵な笑みを浮かべる三蔵は、
「甘いんだよ愚民ども」
そう言ってスペードのA(エース)を2人に見せ付けた。
「あのー、すみません。僕ジョーカーなんですけど」
えへっ、っと微笑んでいる八戒に誰もが堕落感を覚えた。
もう勝ち目が無いと1番に感じ取った悟空はの眠るベッドにダイビングした。
「あーもう俺ベッドがいいーっ!!」
「あっ!! てめぇ何してやがる!!」
「・・・・・・もうイイよ、お前ら死ねよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・お願いだから静かに寝させてよ」
悟空が上から乗っかったため、ほんの小さな声でしか発せられなかったその声は、
誰にも届かない。
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なんて脈絡の無い話なんでしょう;
やっぱギャグの方がすごく書きやすいです!
次々に台詞は思いつきますし原作にも助けていただいてvv
では、ここまで読んでいただけて本当に感謝に堪えません! ありがとうございました!
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