思いがけないプレゼント
「神子。」
長い森を抜けて、たどり着いた場所には夜空が広々と現れた。
泉水はかたわらの一本の竹に近づく。
理由は―葉の上に滲むような光の玉が4つ5つ乗っていたから。
龍神の神子であるを連れて、日が暮れた糺の森を二人で歩く。
『少しでも神子のお慰めになればよいと』
そういうことだった。
その竹に顔を二人で近づけて。
まるで光の水玉か何かを掬い取るようにその光を受ける。
そして水では無い証拠に、
泉水の優しい手のひらは、蛍の光の色に明け染めて、闇の中に指の輪郭が透けて見えた。
火は壊れずに、ふと弱まって。
また息を吸うようにまた優しく明るい色に染まった。
「・・・・綺麗」
泉水はその無垢な笑顔に微笑み
「そうですか。それは嬉しいことです。
私のようなものでも、神子に笑っていただくことができるなど・・」
「ううん、泉水さん。
私、泉水さんがいるだけで、いつも安心できるんです。
一緒にこんなに綺麗な景色を見れるなんて、すごく嬉しいです!」
また笑顔
「神子・・」
そんな綺麗な顔で笑うと。
自分に価値が見えてくる・・・。
価値など無いと思っていた私にも、いて良かったことがあるのだと。
そんな気持ち。
神子がいなかったら思いもしなかったのでしょう・・。
泉水の蛍を見る動作が停まり、を見る。
「神子。」
「何でしょう?」
「可愛らしいですね、頭の上にとまっています。」
とささやく。
「えっ!?本当ですか!?」
「静かに、手を出さないでくださいますでしょうか。」
「髪飾りのように綺麗ですから。」
泉水はをじっと見ている。
蛍の火をまとったは、綺麗だった。
「・・ありがとうございます。」
こんなものなのだろうか。
自分は神子を慰めに来たのに、会話も弾まない。
けど自分はこれで十分幸せだった。
願わくばこの想いがずっと
続きますように。
「神子、辛くなったら、いつでも申してください。
こんな私でよければ出来る限り、力になります。」
「そろそろ、帰りましょうか。」
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