空気が澄んだ、晴れた朝
『空気が澄んだ、晴れた朝』
まさに名前どおり。
青い空に浮かぶ雲も真っ白で。
何か行事でもあるのではないかとも思えるような、そんな朝。
今日は日曜日!
部活も用事も何も無い自由な曜日。
ただ、いつもと違うのは―
今日は敦盛さんの誕生日だから。
だから今日だけは・・・ちょっと、気分が良いのかな♪
そんなことを想いながらは、屋敷中を探し回る。
敦盛さんは日が当たるのは似合わないって言ってたけど・・・
大丈夫だよね!
「あ、弁慶さん。」
たまたまそこにいたのか。
それとも計算のうちなのかは分からないが、廊下を曲がると庭を見ている弁慶がいた。
弁慶が庭を眺めるなんて珍しい。
「ああ、さん。
ふふっ・・どうしたんですか?僕の方を見て。」
「あっ(///)いえっ!そ、そうだ、敦盛さんどこにいるか知りませんか?」
「敦盛君なら水のあるところですね。」
「水・・?」
「ええ、敦盛君は水の八葉ですからvv」
「・・・・根拠無いなぁ・・。」
「ふふっ、冗談ですよvv敦盛君は音羽の滝に行ったそうですよ。
ほら、水のあるところでしょう?」
くすくすと上品に笑う弁慶も、意外と頼りになる人間だったことをは思い出す。
これまで、戦いを終わらせるためにどれだけ弁慶に頼ってきたことか。
そう考えると、の顔から笑いがこぼれた。
するとその顔は、迷いの無い、すっきりとした顔になる。
「くすっ。
弁慶さん、ありがとうございます。私行って来ますね〜!」
「―くすっ。
敦盛君、さんにならなら分かってもらえるのかもしれませんね。」
独り言。
そう言い切るには少し矛盾があった。
その言葉の向こうには―
in音羽の滝
音羽の滝と言えば、小学校の修学旅行で来ただけの場所だった。
の印象は、『水が流れていて寒い場所』
それは丁度雨が降っていたからなのかもしれないが。
今は違う―空気が澄んだ、晴れた朝だ。
それなら、もっと違う角度からこの『京』を見つめていける。
そうなったのなら、敦盛にも、この想いを打ち明けることができるだろう。
「敦盛さん!!」
声の先は、青葉の笛を奏でている無官の大夫。平敦盛。
は、彼が怨霊であることも知っていて、この場所が、清らかな場所であることも。
「神子・・。」
演奏を中断させちゃって、怒らせちゃったかな・・?
それとも、やっぱり誕生日くらい、静かな方がいいのかな?
私、苦手に思われてるのかな・・?
「神子?」
そんな思考をめぐらせていると、敦盛は心配したのか、の方に来た。
―とても心配そうに。
「神子、どうした?」
「あ・・敦盛さん、お誕生日・・・・おめでとうございます。」
「あ、ありがとう。だが、
私はもう、人ではない。
私の中の時間は、止まってしまっているのだから・・・。」
「でも、私のことは覚えてますよね?」
「・・・ああ。
神子のことは・・忘れたくない。」
「・・・・本当ですよね・・?」
「ああ。」
にとてつもない安心感が降ってくるようだった。
蛍のように、抑えきれない想いが言の葉に宿る。
「敦盛さん・・・大好きっ!」
もう、後戻りはできない。
私のことを頼って、敦盛さんはいろんなことを打ち明けてくれた。
それに私にも、伝えたい想いがあった。
それは敦盛さんのことに比べたら、小さいのかもしれない。
最初は糸のように小さかったものなのかもかもしれない。でも私は、その想いを伝えたい。
だから・・・・言っちゃった♪
「あの・・私は・・その・・・」
予想以上に早く敦盛の声が聞こえた。
「初めて会ったときから神子に惹かれていて・・・その・・・
私も・・神子が好きなのだ・・。」
それ以上言葉は返さなかった。
でも言葉よりも大切なことがある。
でも何も言わないのは失礼かな・・?
「敦盛さん。」
「なんだ?」
「夜よりもずっと、『空気が澄んだ晴れた朝』似合いますよ。」
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